2014年1月24日 星期五

「四月期報告」

1.前半期

くすのきの里自治行政区では、新規職員の増員に伴い、妖精人類(以下、妖精)とヒト人類との交流を試みた。
当初、広域に生活圏をもち定住しない妖精との対話は、困難を極めることが予想された。
そこで職員考案による新規採集法を実施。結果として四人の妖精との接触に成功した。
この際、接触は極めて平和的かつ合法的に行なわれ、全く問題はなかった。
妖精四人にはそれぞれ身体的特徴が認められたものの、多数の個体に混ざった場合、必ずしも決定的な判断材料とはならない。
そこで職員は四人それぞれの命名を提案した。この提案は、個体名を持つ習慣がなく、種族的好奇心に富む彼らに快く受け入れられた。
四人は「きゃっぷ」「なかた」「ちくわ」「さ・くりすとふぁー・まくふぁーれん」と命名され、対話を円滑に進めることが可能となった(図面Ⅰ参照)。

その後、離散期にあった妖精の活動状態が集合期へと移行した。
近隣域に暮らしていた妖精の大半が集まったものと見られ、人口は稠密化した。個体数の集合により、文化ならびに科学水準の異常活性が認められるようになった。
このときには、一晩で都市型の巨大遊具が作られるなど、かなり大規模な集合であることがうかがえる。

これらの変化を職員は注意深く、節度を持って観察した。
時には妖精との遊戯に誘われることもあり、地域交流は考え得る限り最大限順調に行なわれていて、全く問題なかった。

既存の研究報告が示している通り、集合期は比較的短い期間(五日から七日)で離散期へ移り変わる。これは妖精という種族特有の、自らの創造物に対する持続的関心の少なさに起因する数字である。平均一週間という数字は、当くすのきの里の過去記録と一致するものであり、おおむね信頼にたるデータだと思われる。
しかし今回は、前例にない期間での移行が起こり、おおよそ三日で妖精は離散していくことになってしまった。この原因については目下調査中ではあるが、解決の見通しは立っていない。職員の対応に不備があった可能性は否定できないが、我々が未だ知らない原因によるものかも知れず、早計は避けるべきであろう。
集合期は文化水準が著しく上昇しているため、ヒト社会からの過度の影響が起こらないように留意しなければならない。特に重犯罪などに代表されるヒト人類特有の悪弊は、より高次の技術力をもつ妖精社会にとっては極めて有害であるとされる。過度の干渉は調停理事会の理念に反するばかりか、調停業務事態の遂行を困難にするものである。
そのような観点から考察しても、担当職員の認識に不備があったという事実はなく、妖精たちにとって影響力が強すぎると予想される宗教概念などの伝播もなく、実に全く本当に問題はなかった。


2.後半期

前半期に引き続き、後半期にも集合離散の転変が確認された。
くすのきの里から発する交易道七号線四キロの地点にある、高層都市遺跡を切り開く形で作られた人工的なサバンナが発見された。
職員による調査の結果、多数の妖精がここで擬似的原始生活を営んでいることが判明。またこの集団には「なかた」「ちくわ」両氏の姿も見られた。
その生活様式は「人類のあけぼの」を模しているように見え、妖精特有の行動である「ヒト模倣」であると推測できる。
またサバンナには、恐竜(人類と恐竜が同時期に生存したという事実はないが、これは妖精的な諧謔の類とみるべきである)を模倣したペーパークラフト(図版Ⅱ参照)が多数配置されていた。ゴム動力によって自発運動するこれらのペーパークラフトは、単純なようでいて極めて複雑な構造をしており、妖精たちの持つ技術がいかに並外れているかを再確認させるに足るものだった。
これらは、友好物資(菓子類)の贈与に赴いた職員自らが目撃した。なおこの接触によって妖精に危害が及ぶなどのアクシデントは一切なく、全く問題はなかった。
その後、ペーパークラフトには貴重な菓子類を体内に隠す性質があることが判明し、妖精たちに狩猟の概念が生じるようになった。ペーパークラフトは自律的に活動しているため、これを停止させて菓子を入手するには、物理的に破壊するしかなかったのである。職員によって狩猟という暴力的な風習が教唆されたわけでは断じてなく、全く全然これっぽちも問題はなかった。
またその後の狩猟生活もごっこ遊びの域を出ることはなく、この点で特に憂慮すべき部分はないと思われる。離散期への移行を見届け、視察を終えた。
なおペーパ-クラフトは相当数がサバンナに解き放たれていたようで、それらの一部は狩猟圧の高まりを生き延びてまだ生存している。
一部廃墟を超えて活動域を広げた固体もあったはずだが、危険性は一切なく、紙であることも考えれば遠からず機能は停止すると思われる。
だがもしかするとペーパークラフトは、活動性を維持するための機能を備えているかもしれず、そのため長期にわたって目撃されたり淘汰されたり自然選択されたり変異されたり多様化したりするようなろくでもないことが今後さらにあるかもしれないが、全く問題なく収束することを内政非干渉の見地に立つ本件とは直接的には無関係な一調停間としては切に祈りたい。

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